最終更新日:2015/7/28
経済学には「比較優位」という考え方があります。乱暴に説明すると、それぞれの国が得意なものを生産すればウィンウィンの関係になるというものです。
もう少し具体的に話してみると。
とある時代のイギリスとフランスの生産量が次のようになっていたとします。
毛織物 | ワイン | |
イギリス | 36 | 30 |
フランス | 40 | 45 |
数字だけを見ると、毛織物とワインと、どちらもフランスの方が有利ですが、視点をちょっと変えてみると違う結果が出てきます。
例えば毛織物を基準に考えると、イギリスでは、ワインは毛織物の83%くらいの生産効率です。一方、フランスでは、ワインは毛織物の112.5%の生産効率になります。すると、イギリスでは毛織物を、フランスではワインを生産したほうがそれぞれの国にとって有利ということになります。
つまり、フランスはワインを作って、イギリスは毛織物を作ると、みんな幸せということです。
この考え方を、社員の仕事効率で考えてみます。
2人の営業社員がいたとします。この2人がそれぞれ電話営業をしていたとして、一ヶ月の仕事は次のような感じだったとします。ちなみに、電話と契約にかける時間はまったく同じだったとします。
電話のアポイント数 | 契約件数 | |
社員A | 36件 | 6件 |
社員B | 25件 | 5件 |
どうもAさんの方が優秀です。では、この2人に同じ仕事をずっとさせるべきでしょうか。
これを電話のアポイント数を基準にしてみると、Aさんは6件に1件の割合で契約が取れています。一方、Bさんは5件に1件の割合で契約が取れています。比較優位で考えると、Bさんはアポイントよりも契約の方に優位性があるようです。
そこで、Aさんが電話のアポイントだけをやって、Bさんが契約だけをしたとします。
結果は、次の通りです。
電話のアポイント数 | 契約件数 | |
社員A | 72件 | 0件 |
社員B | 0件 | 約14件 |
2人が別々に仕事をしていたときよりも、契約件数が3件上昇しています。これが比較優位の考え方です。
どんな人でも、得意不得意があります。比較優位が説明するのは、そうした得意不得意をうまく生かすことによって、より高い生産効率を目指せるということです。こうした考え方は、社員の活用にも大きなヒントになります。
比較を絶対的な数字で行うのではなく、仕事の内容に対する割合で考えると、もっと違う視点が見えてきます。